「世界の果てで待っていて ―天使の傷痕―」／高遠琉加

★★★☆☆

＜裏表紙より＞
元刑事の黒澤統一郎は、渋谷区神泉に黒澤調査探偵事務所を構えている。
そこにはいろんな人生を抱えた人が訪れる。
ある雨の日、少女と見紛う少年・奏がやってきた。
3年前に行方不明になってしまった双子の兄・律を探してくれ、と。
1度は依頼を断った黒澤だが、
かつての同僚で現役刑事である櫂谷雪人もある事件の関係で律を探しており
ふたりは協力することになる。
静と動。理性と本能。
好対照な雪人と統一郎の関係は、統一郎が刑事をやまてからも続いていた。
甘い一夜の記憶を忘れたふりをして。
複雑に絡み合う過去と現在。
彼らの未来は―!?

＜独り言＞
冒頭で、5月の雨の渋谷が描写されているせいか
全編通してその空気をまとっていた印象。
湿度が高く、埃っぽく、臭い空気の街。
アリの群れのごとき人影がうごめく渋谷の街を
ガラス越しに見ているような。
自分(読者)はあくまで傍観者。
ストーリーを一歩引いたところからたどっていた(私的見解)。

※以下、ネタバレ含む。

しかし…
探偵×刑事モノなのに、なんてロマンティックなタイトル…。
結局、世界の果てで待っているのは誰なのか…
解釈の仕方で複数の人物が挙げられるけど
その選択を読者にさせる感がイイ。

凄惨な事件と甘い一夜の記憶に囚われた二人の微妙な関係が
最後まで貫かれ、済し崩し的に
肉体関係→恋愛関係に発展しなかったのを評価したい。

あとがきによると、続編があるらしいんだけど
まだ発表されてないみたいだなぁ。
続きを読みたいような、このまま終わってても気持ちいいような。